Q-類似

テンプレート:小文字 テンプレート:Mvar-類似（きゅーるいじ、テンプレート:Lang-en-short）とは、理論に テンプレート:Math の極限で、元の理論に一致するように径数 テンプレート:Mvar を導入するような拡張のことをいう。テンプレート:Mvar-拡張（テンプレート:Lang-en-short）などとも呼ばれる。

そのような拡張は何通りも考えうるが、テンプレート:Mvar-数や、テンプレート:Mvar-微分やテンプレート:Mvar-積分を用いるテンプレート:Mvar-解析学の定義に基づいた拡張が一般的に用いられ、解析学や組合せ論、特殊関数、量子群などの分野に応用されている。

概要

テンプレート:Mvar-数

最も基本的な テンプレート:Mvar-数 テンプレート:Math （テンプレート:Mvar-整数やテンプレート:Mvar-ブラケット（テンプレート:Lang-en-short）とも呼ばれる）とは、自然数 テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar-類似であって、テンプレート:Math の極限で テンプレート:Math となるように

$[n{]}_q:=\frac{1-q^n}{1-q}=\sum _{k=0}^{n-1}{q}^k$

と定義される。ただし、文献によっては、とくに量子群の文脈では、$q\mapsto q^{-1}$ で不変な

$[n{]}_q:=\frac{q^n-q^{-n}}{q-q^{-1}}$

あるいは

$[n{]}_q:=\frac{q^{n/2}-q^{-n/2}}{q^{1/2}-q^{-1/2}}$

と定義される。この記事では最初の定義を用いるが、他の定義でも後述の テンプレート:Mvar-階乗やテンプレート:Mvar-二項係数は テンプレート:Mvar-数を用いて同様に定義される。

テンプレート:Mvar-階乗

またテンプレート:Mvar-階乗 テンプレート:Math （テンプレート:Lang-en-short）は、テンプレート:Mvar-数によって

$[n{]}_q!:=\prod _{k=1}^n[k{]}_q=\frac{(q;q{)}_n}{(1-q{)}^n}$

と定義される。ただし テンプレート:Math は[[qポッホハマー記号|テンプレート:Mvar-ポッホハマー記号]]を表す。

このとき テンプレート:Math を テンプレート:Mvar 次の対称群、テンプレート:Math を置換 テンプレート:Mvar の転倒数として、

$[n{]}_q!=\sum _{\sigma \in S_n}{q}^{\mathrm{inv}(\sigma )}$

が成り立つテンプレート:Sfn。これは $q\to 1$ の極限で、通常の階乗 $n!$ が $n$ 個のものを並べる順列の総数を表すことに対応している。 また有限体 テンプレート:Math 上の一般線型群 テンプレート:Math の位数は

$|\mathrm{GL}(n,q)|=[n{]}_q!(q-1{)}^n{q}^{(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{2})}$

と表せる。

テンプレート:Mvar-二項係数

テンプレート:Mvar-二項係数（テンプレート:Lang-en-short）は、二項係数の テンプレート:Mvar-類似で、

${(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k})}_q:=\frac{[n{]}_q!}{[n-k{]}_q![k{]}_q!}=\frac{(q;q{)}_n}{(q;q{)}_k(q;q{)}_{n-k}}$

によって定義されるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar が素数のべきのとき、テンプレート:Mvar-二項係数は有限体 テンプレート:Math 上の テンプレート:Mvar 次元線型空間内における テンプレート:Mvar 次元部分空間の数に等しいテンプレート:Sfn。

より一般に テンプレート:Mvar-多項係数は テンプレート:Math のとき

${(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k_1,\dots ,k_m})}_q=\frac{[n{]}_q!}{[k_1{]}_q!\cdots [k_m{]}_q!}$

によって定義されるテンプレート:Sfn。 このとき

${(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k_1,\dots ,k_m})}_q={(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k_1})}_q{(\genfrac{}{}{0ex}{}{n-k_1}{k_2})}_q\cdots {(\genfrac{}{}{0ex}{}{n-k_1-\cdots -k_{m-1}}{k_m})}_q$

${(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k})}_q={(\genfrac{}{}{0ex}{}{n-1}{k})}_q+q^{n-k}{(\genfrac{}{}{0ex}{}{n-1}{k-1})}_q$

のようなよく知られた等式の類似が成り立つテンプレート:Sfn。

テンプレート:Mvar-二項定理

テンプレート:See also テンプレート:Mvar-二項定理は、二項定理のテンプレート:Mvar-類似であり、

$\prod _{k=0}^{n-1}(1-q^{k-1}x)$

について、$a=q^{-n}$とするとき、

$\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(a;q{)}_n}{(q;q{)}_n}{x}^n=\frac{(ax;q{)}_{\mathrm{\infty }}}{(x;q{)}_{\mathrm{\infty }}}$

によって定義される。

これは、後述のテンプレート:Mvar-超幾何級数を用いて、

${}_1{\varphi }_0[\begin{array}{c}a\\ -\end{array};q,x]$

と表すことができる。　

また、テンプレート:Mvar-二項係数を用いて、

$\sum _{k=0}^n{(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{k})}_q{q}^{\frac{k(k-1)}{2}}(-x{)}^k$

と表すこともできる。

テンプレート:Mvar-ポッホハマー記号

テンプレート:See also テンプレート:Mvar-ポッホハマー記号（テンプレート:Lang-en-short，テンプレート:Mvar-シフト因子，テンプレート:Mvar-シフト階乗とも呼ばれる）は、ポッホハマー記号（昇冪）のテンプレート:Mvar-類似であり、テンプレート:Mvar-類似の計算において頻繁に現れ、有限積あるいは無限積を簡略化して表記するために用いられる。

$(a;q{)}_{\mathrm{\infty }}:=\prod _{k=0}^{\mathrm{\infty }}(1-a{q}^k)$

によって定義され、有限積については、

$(a;q{)}_n:=\frac{(a;q{)}_{\mathrm{\infty }}}{(a{q}^n;q{)}_{\mathrm{\infty }}}$

と定義される。とくにテンプレート:Mathのときは、

$(a;q{)}_n=\prod _{k=0}^{n-1}(1-a{q}^k)$

が成り立つ。

第二引数（基底と呼ばれる）がテンプレート:Mvarのときは、$(a;q{)}_n=(a{)}_n$と略記され、複数の引数を持つテンプレート:Mvar-ポッホハマー記号は、$(a,b,c;q{)}_n=(a;q{)}_n(b;q{)}_n(c;q{)}_n$と分解される。

以下のようにテンプレート:Math の極限を求めれば、ポッホハマー記号に一致する。

$\underset{q\to 1}{\lim }\frac{(q^a;q{)}_n}{(1-q{)}^n}=\underset{q\to 1}{\lim }\frac{1-q^a}{1-q}\frac{1-q^{a+1}}{1-q}\cdots \frac{1-q^{a+n-1}}{1-q}$

$=\underset{q\to 1}{\lim }[a{]}_q[a+1{]}_q\cdots [a+n-1{]}_q=a(a+1)\cdots (a+n-1)=(a{)}_n$

テンプレート:Mvar-解析学

テンプレート:Mvar-微分

テンプレート:Mvar-微分（テンプレート:Mvar-差分とも呼ばれる）は微分の テンプレート:Mvar-類似で、任意の関数 テンプレート:Math について テンプレート:Mvar-微分を

$d_q(f(x)):=f(qx)-f(x)$

によって定義する。さらに導関数の テンプレート:Mvar-類似である テンプレート:Mvar-導関数は

$D_q(f(x)):=\frac{d_q(f(x))}{d_q(x)}=\frac{f(qx)-f(x)}{(q-1)x}$

によって定義される。

テンプレート:Mvar-導関数を求める演算は線形性を持つが、ライプニッツ則はテンプレート:Math の極限のみで成り立つ。

$D_q(f(x)+g(x))=D_q(f(x))+D_q(g(x))$

$D_q(f(x)g(x))=f(x)D_q(g(x))+D_q(f(x))g(qx)$

その他にも、以下のような性質が知られている。

$D_q{x}^n=[n{]}_q{x}^{n-1}$

$D_q^m{x}^n=\frac{[n{]}_q!}{[n-m{]}_q!}{x}^{n-m}$

テンプレート:Mvar-積分

テンプレート:Mvar-積分（テンプレート:仮リンク）は、積分のテンプレート:Mvar-類似であり、不定積分は、

$\int f(x)d_{q}x:=(1-q)\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(x{q}^n)x{q}^n$

によって定義され、定積分は、

$\underset{0}{\overset{a}{\int }}f(x)d_{q}x:=(1-q)a\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(a{q}^n)q^n$

$\underset{b}{\overset{a}{\int }}f(x)d_{q}x:=\underset{0}{\overset{a}{\int }}f(x)d_{q}x-\underset{0}{\overset{b}{\int }}f(x)d_{q}x$

$\underset{0}{\overset{\mathrm{\infty }}{\int }}f(x)d_{q}x:=(1-q)\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}f(q^n)q^n$

$\underset{-\mathrm{\infty }}{\overset{\mathrm{\infty }}{\int }}f(x)d_{q}x:=(1-q)\sum _{n=-\mathrm{\infty }}^{\mathrm{\infty }}(f(q^n)+f(q^{-n}))q^n$

によって定義される。

テンプレート:Mvar-積分はテンプレート:Mvar-微分の逆演算であり、

$D_q\underset{0}{\overset{a}{\int }}f(x)d_{q}x$

$=\frac{1}{(1-q)a}((1-q)a\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(a{q}^n)q^n-(1-q)aq\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(a{q}^{n+1})q^n)$

$=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(a{q}^n)q^n-\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}f(a{q}^{n+1})q^{n+1}$

$=f(a)$

となることからも確かめられる。

初等関数のテンプレート:Mvar-類似

テンプレート:Mvar-指数関数

テンプレート:Mvar-指数関数は、指数関数のテンプレート:Mvar-類似であり、

$e_q(x):=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{x^n}{[n{]}_q!}=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{x^n(1-q{)}^n}{(q;q{)}_n}$

によって定義され、次のような同値の定義が用いられることもある。

$e_q(x):=\frac{1}{((1-q)x;q{)}_{\mathrm{\infty }}}$

指数関数の導関数が指数関数であるのと同様に、

$D_q{e}_q(x)=e_q(x)$

が成り立つ。

とくに、可換性を持たず、$qab=ba$を満たすような量子平面上の変数テンプレート:Mathについて、次のような指数法則が成り立つことが知られている。

$e_q(x+y)=e_q(x)q_q(y)$

テンプレート:Mvar-対数関数

テンプレート:Mvar-対数関数は、対数関数のテンプレート:Mvar-類似であり、

${\log }_q(x):=(1-q)(x-1)\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{q^n}{1+(x-1)q^n}$

によって定義されるが、これはテンプレート:Mvar-指数関数の逆関数ではなく、これとは異なる定義も複数存在する。

また、テンプレート:仮リンクで用いられるテンプレート:Mvar-指数関数およびテンプレート:Mvar-対数関数は、テンプレート:Mvar-類似とは全く異なる点に注意が必要である。

テンプレート:Mvar-三角関数

テンプレート:Mvar-三角関数は、三角関数のテンプレート:Mvar-類似であり、テンプレート:Mvar-指数関数を用いて、

${\sin }_q(x):=\frac{e_q(xi)-e_q(-xi)}{2i}=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^n{x}^{2n+1}}{[2n+1{]}_q!}$

${\cos }_q(x):=\frac{e_q(xi)+e_q(-xi)}{2}=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^n{x}^{2n}}{[2n{]}_q!}$

によって定義され、通常の三角関数と同様に正接、余接、正割、余割関数のテンプレート:Mvar-類似も定義される。

また、テータ関数を用いた次の定義も存在する。

${\sin }_q(x):=\frac{{\vartheta }_1(x,e^{\frac{{\pi }^2}{\log q}})}{{\vartheta }_2(\frac{\pi }{2},e^{\frac{{\pi }^2}{\log q}})}$

${\cos }_q(x):=\frac{{\vartheta }_1(x,e^{\frac{{\pi }^2}{\log q}})}{{\vartheta }_2(0,e^{\frac{{\pi }^2}{\log q}})}$

特殊関数のテンプレート:Mvar-類似

テンプレート:Mvar-ガンマ関数

テンプレート:Mvar-ガンマ関数は、ガンマ関数のテンプレート:Mvar-類似であり、

${\mathrm{\Gamma }}_q(x)=\frac{(q;q{)}_{\mathrm{\infty }}}{(q^x;q{)}_{\mathrm{\infty }}}(1-q{)}^{1-x}$

によって定義される。

通常のガンマ関数のように、

${\mathrm{\Gamma }}_q(x+1)=[x{]}_q{\mathrm{\Gamma }}_q(x)$

が成り立ち、またテンプレート:Mvarが自然数のとき、

${\mathrm{\Gamma }}_q(x)=[x-1{]}_q!$

が成り立つ。

その他にも、以下のような性質が知られている。

${\mathrm{\Gamma }}_q(x+\frac{2\pi i}{\log q})=(1-q{)}^{-\frac{2\pi i}{\log q}}{\mathrm{\Gamma }}_q(x)$

${\mathrm{\Gamma }}_q(x+\frac{\pi i}{\log q})=2\frac{(1-q{)}^{-x}}{(1+q{)}^{1-x}}{\mathrm{\Gamma }}_q\left(\frac{\pi i}{\log q}\right)\frac{{\mathrm{\Gamma }}_{q^2}(x)}{{\mathrm{\Gamma }}_q(x)}$

また、テンプレート:Mvar-ベータ関数は、ベータ関数のテンプレート:Mvar-類似であり、テンプレート:Mvar-ガンマ関数を用いて、

${\mathrm{B}}_q(x,y):=\frac{{\mathrm{\Gamma }}_q(x){\mathrm{\Gamma }}_q(y)}{{\mathrm{\Gamma }}_q(x+y)}$

と定義される。

さらに、テンプレート:Mvar-円周率は、円周率のテンプレート:Mvar-類似であり、

$\pi (q):=\sqrt[4]{q}{\mathrm{\Gamma }}_{q^2}{\left(\frac{1}{2}\right)}^2$

によって定義される。

テンプレート:Mvar-ポリガンマ関数

テンプレート:Mvar-ポリガンマ関数は、ポリガンマ関数のテンプレート:Mvar-類似であり、テンプレート:Mvar-ガンマ関数を用いて、

${\psi }_q^{(m)}(x)=\frac{d^{m+1}}{d{x}^{m+1}}\ln {\mathrm{\Gamma }}_q(x)$

によって定義され、以下のような性質が成り立つことが知られている。

${\psi }_q^{(0)}(x+1)={\psi }_q(x)-\frac{q^x}{1-q^x}\ln q$

${\psi }_q^{(m)}(x+\frac{2\pi i}{\log q})={\psi }_q^{(m)}(x)$

${\psi }_q(x\pm \frac{\pi i}{\log q})={\psi }_{q^2}(x)-{\psi }_q(x)+\log \frac{1+q}{1-q}$

${\psi }_q^{(m)}(x\pm \frac{\pi i}{\log q})={\psi }_{q^2}^{(m)}(x)-{\psi }_q^{(m)}(x)$

また、テンプレート:Mvar-オイラー定数は、オイラー定数のテンプレート:Mvar-類似であり、テンプレート:Mvar-ポリガンマ関数を用いて、

${\gamma }^{(m)}(q):=\frac{(-1{)}^{m+1}}{m!}{\psi }_q^{(m)}(1)$

と定義される。

テンプレート:Mvar-超幾何級数

テンプレート:Mvar-超幾何級数は、超幾何級数のテンプレート:Mvar-類似であり、

${}_r{\varphi }_s[\begin{array}{c}{a}_1,\cdots ,a_r\\ b_1,\cdots ,b_s\end{array};q;z]:=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(a_1,\cdots ,a_r;q{)}_n}{(a_1,\cdots ,a_r,q;q{)}_n}{((-1{)}^n{q}^{\left(\frac{n}{2}\right)})}^{1+s-r}{x}^n$

によって定義される。

とくに、ガウスの超幾何関数のテンプレート:Mvar-類似は、

${}_2{\varphi }_1[\begin{array}{c}a,b\\ c\end{array};q;z]={}_2{\phi }_1(a,b;c;z|q):=\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(q^a;q{)}_n(q^b;q{)}_n}{(q^c;q{)}_n(q;q{)}_n}{x}^n$

によって定義される。

参考文献

• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book

関連項目

• 一元体
• テンプレート:仮リンク
• qポッホハマー記号
• q二項定理
• q超幾何級数
• テンプレート:仮リンク
• テンプレート:仮リンク
• テンプレート:仮リンク
• テンプレート:仮リンク
• テンプレート:仮リンク

外部リンク

• テンプレート:MathWorld
• テンプレート:高校数学の美しい物語