黒板太字

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テンプレート:Refimprove テンプレート:特殊文字

黒板太字体の文字の例

黒板太字(こくばんふとじ、テンプレート:Lang-en-short;黒板ボールド、ブラックボードボールド)は、記号の一部の線(主に垂直線あるいはそれに近い線)を二重打ちにする書体のスタイルである。

しばしば数学の書籍におけるある種の記号に対して用いられ、数の成す集合によく用いられる。黒板太字体の文字は、重ね打ち体 (double struck) として言及されることもある(実際にはタイプライターで重ね打ちをしてもこの字体になるわけではない)。

概説

シカゴマニュアル (CMoS)は1993年の第14版では "[b]lackboard bold should be confined to the classroom(黒板太字は教室内に限るべきである)" (13.14) と忠告しているが、2003年の第15版では、"[o]pen-faced (blackboard) symbols are reserved for familiar systems of numbers(よく知られた数の体系のために黒板太字の記号が用意されている)" (14.12) と記述している。

書籍によってはこれらの文字を単なるボールド体で示しているものもある。もとを正せば黒板太字体は、黒板に太字を書く際に太くない文字との違いをはっきりさせるための方法として用いられたのだが、そこから離れて印刷でも普通の太字と異なる一つのスタイルとして用いられたのは[1]、恐らく複素解析の教科書の テンプレート:Harvtxt が最初である[2]。そして、数学者の中には黒板太字と通常の太字を区別しない者もいる。例えばセールは、黒板以外で「黒板太字」を用いることに対して公に強く非難していてテンプレート:Citation needed、自身は黒板で太字を書くときに重ね打ち字体を用いる[3]けれども、それと同じ記号に対して自身の出版物においては一貫して通常の太字を用いている[4]クヌースも出版物における黒板太字の使用について苦言を呈している[5]

黒板太字記法はブルバキが導入したものだという誤った主張がされることがある[1]が、それに反して秘密結社ブルバキの個々のメンバーは黒板において重ね打ち書体が普及してからも、彼らの著書において通常の太字体を用いている[6]

黒板太字で書かれる記号は、普通の文字で組版されたものが多くの異なる意味を以って用いられるのと異なり、それらの持つ意味の解釈はほぼ普遍的なものである。

数学書で標準的な組版システムである[[TeX|テンプレート:LaTeX]]は黒板太字体を直接サポートしているわけではないが、アメリカ数学会 (AMS) によるアドオンの AMS フォントパッケージ (amsfonts) がそれを担っており、例えばRの黒板太字体である \mathbb{R} と入力すればレンダリングされる。

ユニコードでは、比較的よく用いられるごく僅かの黒板太字体の文字 ( ,,,,,, ) だけが基本多言語面 (BMP) の文字様記号 (2100–214F) に、DOUBLE-STRUCK CAPITAL C などとして収録されている。そして残りは BMP の外の U+1D538 から U+1D550 まで(BMP 収録分以外のアルファベット大文字)と、U+1D552 から U+1D56B まで(アルファベット小文字)および U+1D7D8 から U+1D7E1 まで(数字)に収録されている。BMP の外にあるということは、これらは比較的新しく、広くサポートされているわけではない、ということである。

表示例

以下の表は利用可能な黒板太字体の文字を総列挙したものである。

第一の列にはこれらの文字を遍在するLaTeXマークアップ言語での典型的なレンダリングを示したものである(重ね打ちや追加的に定義された文字は専用のパッケージなどが必要)。第二の列はユニコードのコードポイント。第三の列は文字のグリフ自体をユニコードで表示したもの(ブラウザが対応していてかつ適当なフォントにアクセスできるならば、その場合に限り適正に表示されるはずである)。最後の列は、数学書での典型的な(しかし、これが普遍的なわけではない)使われ方を記してある。

テンプレート:LaTeX ユニコード(16進) 記号 数学的な用法
𝔸 U+1D538 テンプレート:Big アフィン空間アデール環を表す。代数的数体Q代数閉包)を表すこともあるが、その目的では とも書かれる(テンプレート:Overline を使うことも多い)。また代数的整数環(代数的数体の重要な部分環)を表すこともある。
U+1D552 テンプレート:Big
𝔹 U+1D539 テンプレート:Big 球体ブール領域、あるいは体のブラウアー群を表すこともある。
U+1D553 テンプレート:Big
U+2102 テンプレート:Big 複素数体を表す。
U+1D554 テンプレート:Big
𝔻 U+1D53B テンプレート:Big ガウス平面上の(例えば双曲平面モデルとしての)単位円板を表す。あるいは十進小数の全体を表す。
U+1D555 テンプレート:Big
U+2145 テンプレート:Big
U+2146 テンプレート:Big 微分記号を表すことがある。
𝔼 U+1D53C テンプレート:Big 確率変数期待値、あるいはユークリッド空間、または体の塔に属するを表す。
U+1D556 テンプレート:Big 単位ベクトルに使うことがある。
U+2147 テンプレート:Big 数学定数であるネイピア数に使うことがある。
𝔽 U+1D53D テンプレート:Big 何らかのを表す。位数を下付きにして有限体を表すことが多い。また、ヒルツェブルク曲面や、生成元の数(無限の場合は生成集合)を伴って自由群を表すこともある。
U+1D557 テンプレート:Big
𝔾 U+1D53E テンプレート:Big グラスマン多様体や何らかの、特に代数群を表す。
U+1D558 テンプレート:Big
U+210D テンプレート:Big 四元数体(HWilliam Rowan Hamiltonの頭文字)や、上半平面双曲空間、あるいは複体の超コホモロジーを表す。
U+1D559 テンプレート:Big
𝕀 U+1D540 テンプレート:Big 稀に代数的構造の上の恒等写像を記述するのに用いられる。あるいは純虚数全体のなす集合(虚数単位の実数倍の全体)。
U+1D55A テンプレート:Big
U+2148 テンプレート:Big まれに虚数単位を表す。
𝕁 U+1D541 テンプレート:Big 時に無理数全体のなす集合 RQ ()を表す。
U+1D541 テンプレート:Big
U+2149 テンプレート:Big
𝕂 U+1D542 テンプレート:Big (典型的には係数体)を表す。これはドイツ語で体を表す Körper(「体(からだ)」も意味する;フランス語では corps)に由来する用法。またコンパクト空間を表すのにも用いられる。
U+1D55C テンプレート:Big
𝕃 U+1D543 テンプレート:Big レフシェッツ・モチーフを表す。モチーフを参照。
U+1D55D テンプレート:Big
𝕄 U+1D544 テンプレート:Big モンスター群を表す。
U+1D55E テンプレート:Big
U+2115 テンプレート:Big 自然数の全体を表す。0 を含むか否かは文脈や著者の流儀による。
U+1D55F テンプレート:Big
𝕆 U+1D546 テンプレート:Big 八元数の集合を表す。
U+1D560 テンプレート:Big
U+2119 テンプレート:Big 射影空間、事象の起きる確率素数の全体、冪集合、正数の全体、無理数の全体、強制法半順序集合などを表す。
U+1D561 テンプレート:Big
U+211A テンプレート:Big 有理数体を表す(Q は商 (quotient) の頭文字)。
U+1D562 テンプレート:Big
U+211D テンプレート:Big 実数体を表す。
U+1D563 テンプレート:Big
𝕊 U+1D54A テンプレート:Big 十六元数の集合、あるいは球面を表す。
U+1D564 テンプレート:Big
𝕋 U+1D54B テンプレート:Big トーラス(もしくは円周群)、ヘッケ環ヘッケヘッケ作用素テンプレート:Math( あるいは 構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \mathbb{T}_{\text{𝕟}}} ) と書いた)、熱帯半環 (Tropical semi-ring) 、ツイスター空間などを表す。
U+1D565 テンプレート:Big
𝕌 U+1D54C テンプレート:Big
U+1D566 テンプレート:Big
𝕍 U+1D54D テンプレート:Big ベクトル空間を表す。
U+1D567 テンプレート:Big
𝕎 U+1D54E テンプレート:Big 自然数全体(whole number; ここでは非負整数全体の意味で)を表す(これは N0 とも書かれる)。
U+1D568 テンプレート:Big
𝕏 U+1D54F テンプレート:Big まれに任意の距離空間を表すのに使われる。
U+1D569 テンプレート:Big
𝕐 U+1D550 テンプレート:Big
U+1D56A テンプレート:Big
U+2124 テンプレート:Big 整数環Z はドイツ語で「数」を意味する Zahlen の頭文字)。
U+1D56B テンプレート:Big
U+213E テンプレート:Big
U+213D テンプレート:Big
U+213F テンプレート:Big
U+213C テンプレート:Big
U+2140 テンプレート:Big
U+1D7D8 テンプレート:Big 束論においての最小元
U+1D7D9 テンプレート:Big 集合論で、強制法の半順序集合の最大元を表すのによく用いられる。まれに行列環の単位行列。
U+1D7DA テンプレート:Big
U+1D7DB テンプレート:Big
U+1D7DC テンプレート:Big
U+1D7DD テンプレート:Big
U+1D7DE テンプレート:Big
U+1D7DF テンプレート:Big
U+1D7E0 テンプレート:Big
U+1D7E1 テンプレート:Big

ギリシャ文字 μ の黒板太字は(ユニコードにはないが)数論学者や代数幾何学者が[[1の冪根| 1 の テンプレート:Mvar乗根]]全体の成す(もっと言えば群スキーム)を表すのに(下付きの テンプレート:Mvar を付けて)用いることがある[7]

関連項目

参考文献

  1. 1.0 1.1 Google Groups
  2. テンプレート:Cite book
  3. "Writing Mathematics Badly" video talk (part 3/3), starting at 7′08″
  4. 例えば テンプレート:Cite book
  5. Krantz, S., Handbook of Typography for the Mathematical Sciences, Chapman & Hall/CRC, Boca Raton, Florida, 2001, p. テンプレート:Google books quote.
  6. 例えば テンプレート:Cite book
  7. テンプレート:Cite book

外部リンク